毎日新聞で報じられていますが、全国15病院で、夜間や休日の「軽症救急患者」から「特別料金」を徴収しているそうです。その金額は1,000円未満のところもあれば、8,000円以上のところもあります。この「特別料金」は健康保険の対象外で、患者が直接払うことになっています。
なぜ、こんな「特別料金」が発生するのか、いや、病院側が徴収するのでしょうか。それは、緊急性のない患者を減らして医師の負担を軽くし、重症者の治療時間を増やすのが狙いだそうです。つまり、病院側が患者さんを選んでいるということに他ならないのではないでしょうか。これは逆効果でもあり、重症者も受診を控える懸念もあるそうです。これもひとえに、小泉改革の一端、医療制度改革による病院側の悲鳴の表れのような気がします。国の制度に問題があり、病院側だけの問題ではないですが、短絡的な発想だけは避けてほしいです。「特別料金」徴収は、「貧富で医療に差がつく」との疑問もあり、このため幼児から徴収しないなどの配慮も出てはいるようです。
毎日新聞の取材では、2008年中に特別料金を導入した病院と、来年の導入を決めた病院が全国で14カ所、他に2006年に導入した病院が1カ所、導入予定だが時期未定の病院が2カ所あるそうです。
12月から3,990円を取っている前橋赤十字病院は「軽症者の増加で、重症の患者を断る率が増えたため」と説明していますが、一方で病院の収入は年間1億円程度減る見通しだそうです。特別料金の3,990円では、従来なら健康保険から受けていた時間外料金より安い場合もあり、患者減も見込まれるためだそうで、収入を減らしてまで特別料金をもうけて軽症患者を断るのは、減収覚悟で医師の負担減を目指すためだそうです。現場のせっぱ詰まった事情がかいま見られます。他の病院も事情は同様のようで、「特別料金」徴収の導入で患者が減ることも確かです。徳島赤十字病院は2008年11月の時間外救急患者が約1,500人、2007年11月より4割減ったそうです。
埼玉医大総合医療センターは昨秋、8,400円の徴収計画を公表しましたが、徴収を始めないのに患者が約3割減ったそうで、当面、徴収開始を見送っています。現実として、夜に高熱が出たが来院せず、朝になって入院した子どもが2人いたそうで、手遅れにならずに済んだが、いずれも親が「夜はお金(特別料金)を取られる」と誤解していたとのことです。結局しわ寄せは患者さんにくるのです。
岡山赤十字病院は、重症者の受診遅れを心配し、自分で病状を訴えられない6歳未満からは、特別料金を取らないことにしました。患者には「診察して緊急だと分かれば、取らない」と話し、受診を過剰に控えないでと呼びかけているそうで、何のための制度なのか、もう現場はめちゃくちゃ状態です。
医療問題、医師不足や医療側の職場環境、ひいては患者さんが受ける医療の質の低下などは、国が全面的に何とかしなければならない大問題です。個々の病院だけの対応には限界があります。いい加減、国は真剣に医療問題に目を向けてほしいです。今からでも小泉改革の医療制度改革の検証を、現場に即した形で見直してほしいと切に願います。