朝日新聞に、駒澤大学の資産運用での損失を報じています。駒澤大学は、永平寺などで知られた曹洞宗に属する仏教系の大学です。同大学の運用手法はデリバティブ取引です。
デリバティブ(derivative)の意味は「派生的、副次的」という意味です。従来からあるものから発生する二次的なものというものです。たとえば「天候デリバティブ」というものがあります。これは保険と金融が融合したもので、一定の気象条件(気温や降雨量など)を基準として、事前の取決めた数値を上回る(下回る)と補償額が支払われるというもので、屋外イベントを企画する場合に用いられます。
天候デリバティブでは、対象が天候に関する数値ですが、金融の世界では、株式、債券、金利、外国為替(通貨)などが対象となっています。為替の場合、円高になれば利益が得られる、円安になれば利益が得られる問い言う感じです。「金融派生商品」とも呼ばれます。今回の駒澤大学のデリバティブ取引の対象はこの通貨だったようです。
少ない元手で大きな収益を得るレバレッジ効果もあり、将来の見通しが的中すれば高収益が期待できますが、見通しが外れれば大きな損失となります。今回の駒澤大学の場合は、損失が発生し、約154億円の損失となったと報じられています。そして、損失穴埋めのため、キャンパスの土地建物や、野球部のグラウンドを担保に110億円の銀行融資も受けているとも報じています。駒澤大学の昨年度末の資産総額は約940億円、うち現預金は127億円だそうです。駒澤大学のほかに名古屋市の南山学園が約34億円、豊橋市の愛知大学が約28億円の損失を出したそうです。
少子化などから、大学運営に関しての環境の変化に対応すべく、独自に運用手法を駆使して収益を確保使用という努力の表れと思われます。大学が運用を行うことが悪いこととは思いません。アメリカでは、以前より大学が独自に運用を行っていて、リスク商品、たとえば商品市場や不動産市場、オルタナティブ取引などで積極的に運用を行っています。
現在の金融市況により、どうしても運用成果が得られない場合もあります。大学は今後、プロの運用マネージャーをおくなど、運用セクションを正式に確立するのがよいと思います。これは大学だけに限らないことかと思います。学費や会費で成り立っている仕組みのものなどは、運用という手法を、積極的に、しかし、専門のプロフェッショナルを、少々お給料が高くても抱え込んで、収益確保をねらっていくのはよいことだと思います。一般企業も同じです。本業が厳しい中、運用により収益を確保することは決して真以外ではないと思います。
こういう報道が、運用は悪というイメージでとらえられないでほしいと思います。